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BHセミナー「『科学革命』を読む」第一回レジュメ

 

The Scientific Revolution: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

The Scientific Revolution: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

 

  

科学革命 (サイエンス・パレット)

科学革命 (サイエンス・パレット)

 

 Scientific Revolution: A Very Short Introduction ,Lawrence M. Principe,Oxford University Press; 1st edition (May 19, 2011) p4-p20

 

 初期近代におこったとされる科学革命を知るには、その基盤となった中世とルネサンスについて知る必要があります。なぜなら、初期近代において新しいとされていた問いやそれに答えるための方法は、すでに中世にあったものだったからです。また、通常ルネサンスから連想されることは芸術や建築の類のものですが、それ以上に文学・詩歌・科学・工学・行政・神学・医学などの繁栄を築いたと言えます。このルネサンスがもたらしたもののうち、科学革命の基盤として特にあげられるのは、翻訳運動の広まりと大学制度です。また、科学革命期の生活環境的背景として、11世紀からの温暖な気候による豊富な食糧の確保、またそれによる人口増加と安定した社会システムが、学問と思索のための時間を生み出したことがあげられます。その後14世紀半ばに猛威をふるったペストによる人口の半減も、その当時の人々に大きな影響を与えました。本章では、このような時代に生きる人々の世界を根底から変えたものとして、「人文主義の隆起」「可動活字を用いた印刷術の発明」「新世界の発見」「キリスト教の改革」の4つを取り上げ、科学革命の基盤をなすものについて論じています。

 

 人文主義者たちは、自分たちは古代以降の暗黒時代を脱した新時代の住人であり、尊敬すべき古代人たちの成果を上回らなければならないという意識を共有していました。そのことから古代ギリシア語が復興し、プラトンプラトン主義者たちの文書の翻訳が進みました。人文主義者たちがたくさんの新しい文献を得たことにより、大学の内外に新しい流れを生み出しましたが、古代賛美が過剰なあまり、アラビアや中世への敬意を失い、それによってその知識さえも失い始めてしまうことになりました。

 

 1450年前後に可動活字による印刷術が発明され、より速く、正確な本を大量につくることができるようになりました。そしてそれは、人文主義者たちの文書への関心を高め、情報伝達のスピードを大幅にあげることになります。また、文字だけでなく図像の複製能力も以前とはくらべものにならないほど進歩しました。このことは、図像の発展へとつながっていきます。

 

 印刷術の発明とそれによる図像の発展は、新世界の情報伝達に大きく貢献しました。航海を経て持ち帰られた大量の情報は一気にヨーロッパ中へ拡散し、人々の持っていた旧来的世界観を更新していきました。そしてその大量に流れてきた情報は、旧来的自然観の再考をうながしました。また、さらなる知的・物的収穫を求めて、科学技術や地図づくり、航海術、造船術や軍備の改良がすすめられました。

 

 新世界との出会いは、ヨーロッパ人にとって多様な宗教観との出会いでもありました。一方で、彼ら自身の宗教観も多様になっていくこととなります。1517年からの宗教改革によりキリスト教世界が分裂し、それによって生まれたプロテスタントの大学では、カリキュラムと教授法が一新され、新しい科目や研究方法が導入されました。他方、カトリック内部でも改革運動は進行していました。対抗宗教改革がおこり、トリエント公会議では、司祭に対する教育の改善と、出版物において正統的教義が保たれているかの監視を強化が提唱され、イエズス会が熱心に取り組みました。イエズス会は何百もの学校や大学を発足させ、数学や科学を重視したカリキュラムを編成し、科学革命に関与することとなる多くの思想家を育てました。また、航海によって新たに開拓された交易路をつかって新世界へと進出し、多くの知識や習慣を獲得して蓄積していきました。

 

 このような、中世・ルネサンス以来の伝統、ヨーロッパ内での変化、そして新世界との出会いとそれによる知識の更新や拡散が、科学革命の土台をなすこととなります。